うどんこのお雑煮

映画とか読書とかジャグリング。

好きな技が一般人から評価されないということについて

この前天神中央公園で練習してたら
トリッキングをしている人にあった。
(トリッキングとはYAMAKASHIとか
アクションスタントみたいなもののようだ。)
トリッキング -YouTube

発展途上の人という感じであり、
彼はトリッキングに生きており
トリッキングが大好きであり
ゆくゆくはトリッキングで生きていきたいと
思っているかもしれなかった。
僕は、彼が、
「540みたいな難しい技より何よりバク宙が一番受ける」*1
とちょっと悲しそうなトーンで言っていたことを覚えている。
同じようなことを僕もジャグリングで昔から考えていたし
何度も聞いたこともあるように思う。
これは多分、技術と、それを使う技術者が、
葛藤しやすいジレンマなのだと昔から考えていて、
彼の若々しいこの悩みを受けて、
(といっても僕もまだ27歳だけど)
この機会に自分の考えをまとめてみようと思った。

という訳で技術の性質について考えてみよう。
僕は、技術というもの2つのベクトルを持つと思っている。
他者の為に習熟される外向的技術と、
自分の為に習熟される内向的技術と。

外向的技術は"他者からの評価"を得るために習熟される。
この種類の技術はその分野に明るくないような人から
見られても"これはすごい"と思われる。
人間が社会的動物であり、人に貢献するために
何かしなくてはならない以上、技術者は、
この性質の重要性を無視できない。
この国は資本主義なので、
トリッキングの彼の言葉を使って分かりやすく
外向的技術を一言でまとめてしまうと下記となる。
「バク宙はカネになる。」
以降、外向的技術を好む技術者を
外向的技術者と呼ぶことにする。

一方内向的技術は"自分の満足"を得るために習熟される。
この種の技術は他者からの評価はあまり考慮に入れない。
外部からの反応を考えないが故に
何故そんなことをしているか他人には分からないのだが、
本人は楽しいからやっているだけなのだ。
先ほど人間は社会的動物であると述べたが、
同時に満足も追求したい性質を持つのだと思う。
つまり、トリッキングの彼に言わせれば
「540は楽しい。」ということになろう。
以降、内向的技術を好む技術者を
内向的技術者と呼ぶことにする。

この定義を使ってトリッキングの彼
(恐らく内向的技術者だろうと勝手に思っている)
が持っていたジレンマを表現すると
"内向的技術と外向的技術に対する
一般の人々から得られる評価を比較しようとすると
認知的不協和が生じる"ということになる。

認知的不協和とは何か。
これは下記の実験により説明される
摩訶不思議な心理的現象である。
「ある、絶対的に偽と思われる命題
(例えば、戦争は正義だ、殺人は許容されるべきだ、とか。)
について、それを偽だと思っている人たち
(要は、普通の人たち)を集めて
それについて十分に執筆してもらう。
ただし、片方のグループAには10,000円を与える。
(この命題を書く時間に対する妥当と思われる報酬)
もう片方のグループBには10円を与える。
(もちろん、これは全く妥当でない報酬である)
さて、執筆した後、
自分の考えが偽から真に変わる傾向
(戦争は正義かもしれない、殺人は許容されるべきかもしれない)
にあるのはグループBの方である。」

これは、自分がかけたコストに対して
他者からの評価が十分でなかった場合、
自分の信念は激しく揺さぶられるということを意味する。
さて、内向的技術を好む技術者が満足するに足る
評価とは一体どの程度であろうか?
(それはそもそも他者からの評価を受けやすいような
性質を持たないのに?)

これは、心理学的見地からは、
内向的技術者が満足することは決してないという
ことを意味する。
のであろうか、いやそうではないと言いたいのだ。
(なぜなら僕は、内向的技術者だからだ!)

認知的不協和を考慮すると、
自己満足を追い求めることに特化した内向的技術者も
燃え尽きないために他者からの評価が不可欠だと考えられる。
ジャグリングを10年やってきた僕が考えるに、
内向的技術者が燃え尽きないために重要なことが2つある。

一つは、外向的技術も意識して身に付けること。
内向的技術者はほとんど無意識のうちに
内向的技術を身につけようとする傾向があると思う。
人から評価されやすい技術について良く考えること。
外向的技術は、内向的技術者からみると
しばしば凡庸で面白みがなく身につけやすい。
内向的技術者にとってこのようなものを
身につけることは拷問のようなことだが、
技術者として生きていこうと思うならば
これらを身につけることを考慮すること。
言わせてもらえるなら、
手軽に得られる評価というのもそう悪くない。

二つは、内向的技術を評価してくれるような
コミュニティに属すること。
最近、実はこれは結構難しいことがわかった。
SNS,Youtube,JuggleTV,Twitter
あらゆる手段を使ってコミュニティを探すこと。
ジャグリング クラブ・サークル |ikiMap
このようなコミュニティに所属しないなら
燃え尽きる可能性はグッと高くなる。

いずれににせよ、
なんであれ内向的技術者として生きていこうとするなら、
技術的ニヒリズム(虚無主義)に負けてはいけない。
ぼくがかんがえたさいきょうのぎじゅつしゃが
こう言っている。
松岡修造メッセージ | 世間の風が冷たいあなた - YouTube

松岡修造が技術者じゃないって?
つまり、本当の技術者は
傍から見ると
常にそのような評価を受けるということかもしれないね。

参考文献
外向/内向の着想について

MBTIへのいざない―ユングの「タイプ論」の日常への応用

MBTIへのいざない―ユングの「タイプ論」の日常への応用

技術と心理学について

プログラミングの心理学 25周年記念版

プログラミングの心理学 25周年記念版